劇団四季の「ウィキッド」に行って来ました。福岡シティ劇場の福岡公演をうち切ってから約1年。久しぶりに劇団四季の公演を楽しんで来ました。
ウィキッドは「オズの魔法使い」の誰にも語られなかったプロローグ、悪い魔女と善い魔女の誕生秘話が基になっています。人間と動物が同じ言葉を話し、共存しあっている自由の国「オズ」。ここにある大学で出会った、緑色の肌を持つ魔法の力を持つエルファバと、ブロンドの美しく人気者のグリンダ、二人の対照的な少女達の友情が軸になった物語です。
緑色の肌を持つエルファバは、誰からも愛されず思索的で激しい気性の少女です。グリンダはみごとなブロンドで天性の明るさと美貌を持った人気者です。偶然ルームメートになって、性格も外見も全く異なる二人が最初は反発し合うのですが、次第にお互いが理解を深め、友情で結ばれるようになります。
オズの世界から動物の言葉が奪われ、エルファバとグリンダは、オズの魔法使いのいる「エメラルドシティ」にやってきます。緑色に輝く美しいシティに魅了されます。そこで二人は初めて自由に自分らしく振る舞えると思えたからでした。
しかしオズの魔法使いの秘密を知ったエルファバは、動物の自由のため、自分のために孤独な戦いに身を投じます。その時エルファバは魔法使いの陰謀で、「悪い魔女」に、グリンダもその美貌と明るさから「善い魔女」に仕立てられてしまうのでした。
エルファバがなぜ緑色の肌なのかは、中世ヨーロッパで緑は「不幸を招く色」から来ていると思います。悪魔、毒、不運、不実な愛、また運命や偶然の色とされ、今でも古典的なイメージで緑を嫌う人もいます。これはキリスト教では混色を嫌った事にも関係があります。当時は緑色の染料はほとんどなく、緑色の衣が不安定で変色し、樹木の色が季節によって移り変わる、それが人の心の変容にも繋がった事から、緑に「運命の力」を感じていました。
ウィキッドのテーマは、エルファバの緑色の肌にあると思います。エルファバの見かけは確かにマイノリティーに属します。でも見かけが皆と違うからというだけで「悪」と見なすのは正しい事なのか? 人々の不安を解消する為に共通の「敵」を作り出す。皆が正しいと思いこまされた事が正義になってしまう。
角度を変えて見ると、本当のエルファバは思慮深く、正義感の強い、人や動物の心を大切にする優しい少女です。そしてグリンダはそれを直感で見出し、暖かな心で親交していきます。
一見、天然で我が儘に見えるグリンダですが、彼女はオレンジの気性を持っています。オレンジは優しい気持ちを表す暖かい色と言われています。障壁をうち破るのを助け、障害を取り除いて、乱れる心を鎮めるとも言われます。彼女はエルファバのトラウマを、合理的に解決します。
お互いを思いやり、理解しながらも、それぞれの信じる道を進んでいった二人の友情と成長、陰謀と正義、恋愛と冒険を描いた素晴らしいミュージカルでした。オズの魔法使いのストーリーも、ドロシーは影でしか出てきませんが、脳が欲しいカカシ、心が欲しいブリキ男、勇気が欲しいライオンのエピソードも見事に織り込まれています。
参考 「カラーセラピー」 産調出版
「色彩心理のすべてがわかる本」 ナツメ社
http://www.shiki.gr.jp/applause/wicked/
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