久々に北九州市立美術館で行われている、「モーリス・ドニ
展」に行って来ました。モーリス・ドニはゴーギャンの影響を受け、仲間と「ナビ派」を結成しました。日本でもドニの人気は高いですが、単独の展覧会が日本で行われる機会は少ないと思います。
私も今回初めて、まとまった彼の作品を鑑賞する事が出来
ました。今まで見た彼の作品は平面的で、色もソフトやダルトーンで描かれたものが多かった為、余り強く心に訴えてくる事はありませんでした。
けれども今回はそのイメージが一掃され、とても新鮮な驚きがありました。この展覧会では、彼の家族、妻、子供達の情景が多く描かれていた為、とても生き生きとして愛情深い作品に
出会う事が出来ました。子供のいる日常を切り取ったようなスナップ写真のようにも感じられる暖かで、平和な世界観が見られます。
「絵画が、軍馬や裸婦や何らかの逸話である以前に、本質的にある秩序で集められた色彩で覆われた平坦な表面であることを、思い起こすべきである」 彼の絵画論はその後のキュビズム、フォービズム、抽象絵画に影響を与えたとされますが、むしろ彼の作品は、私には古典的な印象を感じさせる気が
します。
敬虔なカトリックであったドニは、家族をモデルに優美で神秘的な宗教画も多く描いています。その作品を見ると、彼が絵画の新しい方向性を打ち出した先駆者でありながら、反面ジョットーやフラ・アンジェリコなどの初期ルネッサンスの画家の影響を色濃く受けていた事も伺われます。
私が特に好きな作品は、別荘の食堂に飾られた「ブルターニュの供物」。背景に青いアジサイが描かれ、妻と子の面影のある聖母子の回りに、4人の娘がブルターニュ地方の生産品を捧げ持つ美しい作品です。
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